弁護士コラム

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【自動車の基本構造】

2015/12/21

自動車は、「ホデー」と「シャシ」の二大構造からなり、シャシは、エンジン・サスペンションなど「走る」、ステアリングシステムなど「曲がる」、ブレーキシステムなど「止まる」の機能があります。

「止まる」についていえば、最近の多くの車には、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)がついています。急ブレーキをかけてしまうと、逆にタイヤが滑ってしまうので確実に止まるようにブレーキをかけられるようにするシステムです。

「曲がる」についていえば、最近は、VSC(Vehicle Stability Control、横滑り防止装置)搭載の自動車が多く、ヨーロッパでの普及率が高いと聞きます。

もっとも、トランスポーターやワイルドスピードマックスなどの洋画を見ていると、果たしてこれらの機能がついているのだろうかと疑問になります。

将来的には、自動運転自動車の導入など、運転手をサポートする技術がどんどん取り入れられていますが、これら機械に不備があった場合、誰にどのような責任が発生するのか、理論的に難しい問題があると思います。



【公示送達に関する名古屋高裁平成27年7月30日判決】

2015/11/27

訴訟を提起しようと思った際に、相手方がどこにいるかわからないために、裁判所に一定期間掲示される等の要件により、相手に訴状が送達されたことにする「公示送達」の制度があります。送達とはいうものの、裁判所の掲示板や官報をみて自分が訴えられていることに気付く人は皆無と思われ、事実上、知らない間に負けているということになりかねません。

この公示送達について、名古屋高裁平成27年7月30日判決は、弁護士法や民事訴訟法に基づく照会等をして、電話番号やFAX番号から相手を調査できる事案であったにもかかわらず、これをしなかったので民事訴訟法110条1項1号の要件(送達すべき場所が知れない場合)を満たさないとしました。

以前、どんな時に公示送達していいかについて検討したところ、「抽象的にいえば、当該事案で、権利関係の発生を公示送達によって決めていい事案かどうか」であると聞いたことがあります。当事者、事実経過、立証の程度、相手方の反論機会の保障の必要性、当該権利の重要性、内容などによって、どこまで事前に調査すべきかも変化する気がします。

判決文の事情からしかわかりませんが、本件については、紛争性もかなりあり、勝手に公示送達して判決してしまっては、被告の反論の機会を失わせる要素が強く、公示送達相当の事案ではないと考えられたのかもしれません。

ちなみに、原告の「弁護士会照会をしても回答が得られないことが多く意味がない」との主張に対し、裁判所は、「弁護士法23条の2所定の照会・・・に回答すべき義務は、秘密保持義務に優先すると解すべき」と判断しています。



【脳挫傷…交通事故障害】

2015/10/21

外傷性脳損傷としては、局在性とびまん性に分けることができます。前者は、脳挫傷、頭蓋骨血腫など局所的・肉眼的に認められる脳の病変をいい、後者は脳震盪、びまん性軸索損傷など広範囲にわたる脳の損傷をいいます。

びまん性軸索損傷は、回転力を伴う衝撃を受けた時の脳の外側と中心側の移動距離がずれにより、軸索(神経細胞から出ている長い突起)が断裂を起こした状態でおり、重症例では重度の意識障害を伴うなど、予後が極めて悪い場合があります。

びまん性軸索損傷の診断には、CTよりMRIが有用です。ちなみに、CTの見方ですが、患者の前方に立ち、下から見上げた状態となりますので、画像上は右と左が逆になりますので注意が必要です(RとLを確認)。



【頭蓋内血腫…交通事故障害】

2015/10/15

頭蓋内の膜としては、外から硬膜、くも膜、軟膜があります。これら膜を隔て、出血した部位・血腫の状況により、①急性硬膜外血腫、②急性硬膜下血腫、③慢性硬膜下血腫、④くも膜下出血、⑤脳内血腫、に分けることができます。

このうち、①急性硬膜外血腫は、硬膜に守られた脳内の外側に出血が溜まっている状態であり、頭蓋内血腫の中では、予後が比較的よいとされます。硬膜が押され、凸レンズのような形になります。

②急性硬膜下血腫については、硬膜とクモ膜の間で出血し、血腫ができたものです。受傷後3日以内のものを急性硬膜下血腫と呼びますが、脳挫傷や脳幹部損傷を伴っていることが多く、緊急手術を行っても手術死亡率が高い傾向があります。

④クモ膜下出血については、外傷以外のケースでよく見られ、脳動脈瘤の破裂により発症するものが多くあります。クモ膜下まで出血しているとさらに予後が悪い可能性が高まります。



【脳脊髄液…交通事故障害】

2015/10/9

頸部に引き続いて脳です。脳は、頭蓋内に脳脊髄液が満たされ、豆腐のように浮いています。脳脊髄液は、側脳室の脈絡叢にて産生され、第三・第四脳室を経て脳と脊髄を循環して、主に大脳クモ膜顆粒から吸収されます。

成人の髄液量は約150ccといわれ、一日の産生量が500~600ccなので、1日3・4回程度、脳内の髄液が入れ替わっていることになります。

脳を入れた頭蓋骨内は、無菌状態の閉鎖空間です。しかしながら、交通事故により、頭部に損傷を受けると、血腫が発生するなどして、頭蓋骨内の圧が上昇(「頭蓋内圧亢進」といいます)します。



【頸部障害…交通事故障害】

2015/9/28

脊椎は、7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎と仙骨から形成されますが、交通事故外傷で最も多いと思われるのが、頸椎部位です。受傷当初は、外傷性頸部症候群などと傷病名が付けられたり、あるいは、頸椎捻挫・頸部挫傷、むち打ち損傷と呼ばれたりもします。

自覚症状としては、首の痛みの他、頭痛・手の痺れなど様々ですが、いわゆる後遺症と認められるためには、レントゲン、CT、MRIなどを読影する過程が必要です。このうち、レントゲンのみで神経症状を捉えるのは困難です。他覚所見として神経症状を見るには、MRIが適しており、T1、T2強調画像それぞれを比較すると、脊髄・神経痕の圧迫状況も見えやすいものといえます。

その他、自覚症状と頸椎の神経異常が整合しているかを確認するものとして、デルマトーム(脊髄神経根から伸びている感覚神経が支配する領域を示した図)があります。頸椎の異常部位と異常が生じるべき部位が整合しているか、確認する必要があります。

以上のように神経異常の確認は必要ですが、これが認められずに治療終了となった場合には、早期に日常生活をし、生活リズムを元に戻すことが肝要です。長期に渡り「安静」にしていると、かえって日常生活に悪影響が生じる場合があります。



【テレマティクス保険】

2015/8/19

テレマティクス(telematics)とはテレコミュニケーション(telecommunication=通信)と(informatics=情報工学)からなる造語です。

先般、テレマティクス技術を活用した自動車保険が発売されるようになりました。何が特徴かといえば、この保険では、普段の自動車走行データを利用して保険料の設定がなされます。そうしますと、スピードを出しすぎたり、急ブレーキを踏んだりする方は、保険料が高くなるものと考えられます。
これにより、目先の保険料節約という効果を超え、自動車事故自体のリスクが減っていくことが期待されます。無事故で幾年過ごしたので幾らとするより、緻密な保険料設定も可能となるでしょう。

このように、画期的な保険ではありますが、保険料設定のために集めたデータを適切に管理・保管できるかという問題もあります。スピードを出したり、急ブレーキを踏んだ程度の情報なら、当人にとって重要性は高くないと思いますが、位置情報を常時把握できるようになれば、プライバシー管理の問題が出てきます。

鹿行地区はクルマ社会で事故も頻発していますが、適切な情報管理の下、事故のない安心・安全なクルマ社会となるように技術活用が進むとよいでしょう。



【裁判の迅速化に係る検証に関する報告書】

2015/7/13

相談を受けていると、裁判をして判決が出るまでにどのくらいかかるかと聞かれることがあります。この点、平成27年4月15日時点のデータに基づき、裁判の迅速化に係る検証に関する報告書をみることができます。
【裁判所HPリンク】裁判の迅速化に係る検証に関する報告書

1 民事第一審
・平均審理期間8.1月、人証調べを実施した事件における平均審理期間20.0月
当事者間の和解により終了できない事案あれば、人証調べが行われた上で判決が下されることが予想されますので、平均20か月くらいかかることになります。勝訴しても、解決が1年半以上伸びてしまっては意味のない案件においては、裁判以外の解決方法を探った方がよいかもしれません。実際は、提訴の準備期間もありますので、当事者としては、さらに長期の裁判をしている感覚になります。次の裁判は1か月半後になりましたと説明すると驚かれることもあります。

2 家庭裁判所
手続代理人が関与している事案の方がそうでない事案に比べて平均審理期間が長くなっています。弁護士が関与した結果対立が先鋭化して解決が長引くのか、当事者間で解決困難であり長期化するような事件が弁護士のところにくるのか、因果はわかりません。

3 刑事第一審
裁判員裁判対象事件では公判前整理期間が短縮されています。裁判員裁判は、スケジューリングが極めてタイトで、あれだけ急いでやれば公判前整理も早く進むのは納得です。当事者の負担はかなり増えますが、民事でも家事でも、裁判員裁判並みの進行がなされれば、審理期間は格段に短くなりそうです。

以上は、裁判現場からの視点と言えますが、実際は、裁判所の人員数、司法予算、裁判を行う場所の確保など、構造的な問題もあるようです。



【裁判員法改正】

2015/6/22

平成27年6月5日、審理が著しく長期にわたる事件を裁判員裁判の対象から除外できる規定を柱とする改正裁判員法が成立しました。

かねてより、裁判員裁判は裁判員の負担が重すぎるとの指摘があり、改正法はこれに応える形になっております。除外対象事件の基準は明示されていないものの、初公判から判決までが1年を超える事件が想定されているようです。

勤め人からしますと、丸3日も裁判をされたら、「著しく長期」で重すぎる負担となる気がしており、除外されて然るべきと思いますが、それだと裁判員裁判が開けなくなってしまいます。ですので、運用上、1週間を超えるような事件は、裁判官だけでやるような形で進んでいくとよいのではと思います。



【悪質自転車への罰則】

2015/6/1

平成27年6月1日より、悪質な自転車運転者に安全講習を義務付ける制度が始まります。
3年以内に2回以上、「危険運転」で摘発された違反者が受講することとなります。
この「危険行為」となる14項目は、以下の通りです。

1. 信号無視
2. 通行禁止違反
3. 歩行者用道路徐行違反
4. 通行区分違反
5. 路側帯通行時の歩行者通行妨害
6. 遮断機が降りた踏切への立入り
7. 交差点での安全進行義務違反等
8. 交差点での優先車妨害等
9. 環状交差点での安全進行義務違反
10. 指定場所での一時不停止等
11. 歩道通行時の通行方法違反
12. ブレーキ不良自転車運転
13. 酒酔い運転
14. 安全運転義務違反

傘さし、イヤホン、片手スマホ、並走、酒酔いなど、「自転車だからいいだろう」などとの意見は通用しません。

安全講習の内容は、テストや感想文の作成などで、費用は5,700円です。講習時間は、3時間(休憩含まず)です。高い、メンドクサイなどと思って受けないと、5万円以下の罰金が科せられます。

とりわけ、都市部においては、環境によい、健康によいなどと利用者が増加してきた自転車ですが、ルール遵守が本格化されました。併せて、自転車事故を起こした場合に備え、低額の自転車保険などの加入も検討しておくと良いでしょう。



【開所一周年を迎えて】

2015/5/7

平素は、当事務所の活動にご理解・ご協力頂き、深く御礼申し上げます。

さて、平成26年5月1日に当事務所を開所以来、一年が経過致しました。
これも、地域の方々を始め、関係各所その他大勢の方のご協力があってこそと思っております。

この1年、多分野に渡り、様々な案件がありました。
どの案件をみても、その案件特有の事情があり、それに併せてご依頼者の方々と共に解決の道を探って参りました。
解決の結果を評価するのは早計ですが、少しでも皆様のお役に立てていればと思います。

今後とも、日々研鑽に励み、迅速な対応をしていきたいと考えておりますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。



【子との面会交流】

2015/4/6

離婚後又は別居中に子どもを養育・監護していない方の親が子どもと面会等を行うことを「面会交流」と言います。面会交流については、離婚などの夫婦関係が解消される際にその実施方法を定めることが多かったと思われます。

もっとも、面会交流については、その実施の強制力に限界があり、実施義務を負う側が体調不良を理由にしたり、子どもが会いたくないと述べているなどして、実施が困難になることもまま見られました。

ところが、平成26年12月4日、父親側が、親権者の母親が拒むために長男に会えないとして、親権者変更を求めた家事審判で、福岡家裁が父親の訴えを認め、親権者を父親に変更する決定を出しました。

また、平成27年3月27日には、熊本地方裁判所において、面会交流の調停合意がなされたにもかかわらず、面会交流を実施しなかったことから、面会交流についての誠実協議義務違反があることを理由に損害賠償請求が認められました(但し、未確定)。

当該事案の事情によるところも大きいと思われますが、漫然と子に会わせないという方法が違法な手段と認められつつあるようです。



【残業代をめぐる裁判】

2015/3/18

労務関係をめぐる事件のうち、近時、残業代請求が増えているように思われます。
残業代に関しては、最終的にこれを支払わずに判決となった場合、「付加金」という制裁的な金員を課し得る規定があります。未払残業代に加えて、付加金を支払わせるというものです。

この規定に関して、有名な十象舎事件(東京地判平成23年9月9日)では、雑誌編集といった不規則な勤務形態の特殊性があった事案で、タイムカードの導入拒否など勤務管理を怠っていたこと、他方、割増賃金の一部弁済をしたこと、和解勧告を受託するなどの経緯があったことなどから、30万円の付加金を認めました。どんな示談で付加金が課されるのか、参考になる事案です。

企業側にとって、残業代に加えて付加金を支払わせることは厳しい判断のようにも見えます。
しかし、この事案は、企業側が、最低限の労務管理をしつつ、訴訟終盤で、裁判所の心証を見ながら和解に前向きな対応をすれば、付加金の支払いを防げるようにも読めます。その意味では、付加金の請求の道が狭められているとも言えそうです。

いずれにしても、そもそもの未払残業代が発生しないように、常日頃から、就労規程を整備することが重要でしょう。



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